ウイルスセンター

武村政春先生の「それ本当にウイルス?~巨大ウイルス~」を聴講して

東京理科大学 大学院理学研究科 武村 政春 先生

はじめに

今回の講演では、東京理科大学の武村政春教授が「巨大ウイルス」をテーマにご登壇された。武村先生は医学の博士号をもち、ヒトや家禽に感染しない環境ウイルスである「巨大ウイルス」の分類、生態、進化に関わる研究に取り組んでこられた。中でも「巨大ウイルス」の発見とその性質解明において国際的に重要な業績を挙げておられ、これまでのウイルスに対するイメージを打ち砕くような、新しい視座と可能性が示された講演であった。

講演の概要

講演はまず、従来のウイルスのイメージと「巨大ウイルス」との比較から始まった。通常、ウイルスと言われてイメージする常識的なサイズは数十nmから300 ~ 400nmである。一方、巨大ウイルスの大きさはというと小型のもので200nm、大型のものになると1000nmを超え、DNA量に関しても巨大であることから、巨大DNAウイルスとも呼ばれることもある。代表例として、ミミウイルス、パンドラウイルス、メドゥーサウイルスなどが挙げられ、それぞれの特徴が解説された。特にメドゥーサウイルスは、宿主の細胞核内で複製を行うことが明らかになっている。また、近年分離された新種のウイルス(Cotonvirus japonicum、Tornadovirus japonicus、Pandoravirus japonicusなど)についても紹介され、日本国内の研究成果が世界的に評価されていることが伺えた。加えて、アカントアメーバを宿主とする感染細胞の行動解析を可能にするプログラム「PKA3」や、感染細胞に特異的に見られる「細胞間橋の形成」や「回転行動」といった現象も映像付きで解説され、感染による宿主細胞の行動変容が強く印象に残った。

学んだこと・印象に残った内容

最も印象的だったのは、武村先生が提示した「細胞核ウイルス起源説」である。これは、かつてウイルスが自身のDNA複製工場を細胞内に形成していた過程が、やがて進化の過程で「細胞核」という構造体へと変化した可能性を示唆するものである。現在我々が持つ核そのものが、ウイルス由来の構造から生まれたかもしれないという仮説であり、ウイルスが寄生する者という見方を大きく超えて、生命進化の重要な一端を担う存在としてウイルスを再定義する考え方である。また、巨大ウイルスが持つ複雑なゲノムやタンパク質の構成要素が、時に細菌や真核生物と区別がつかないほどである点も驚きだった。単なる病原体ではなく、生物の起源や進化に関与する存在としてのウイルスの可能性に深く興味を惹かれた。

感想

今回の講演を通じて、「ウイルスとは何か?」という基本的な問いが、いかに奥の深いテーマであるかを実感した。高校や大学で学んだウイルスは、自己複製ができないから生物とは言えないといった知識が、巨大ウイルスという存在によって大きく揺さぶられた。特に、ウイルスが自らの遺伝情報だけでなく、タンパク質合成に必要な因子を持つ例まであるという事実は、「ウイルスは生物か?」という問いに再び光を当ててくれた。また、巨大ウイルスの発見・分類・性質解明に日本人研究者が大きく関与していることも誇らしく思った。国際誌への掲載や独自命名されたウイルスの数々は、国内の研究レベルの高さと、それを支える地道な探索と観察の積み重ねの成果である。講演は、最先端の研究紹介にとどまらず、研究に向き合う姿勢そのものにも刺激を与えてくれる内容だった。これから自分が学問に向き合っていく上で、純粋な好奇心と探究心の重要さ、そして「問いを持つこと」の意味を忘れずに今後の研究活動にも取り組みたいと思う。

執筆者

慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 修士1年 高田賢司

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