ウイルスセンター

菊地 紘子 先生の「アフリカの片すみから(リモート講義)」を聴講して

国立国際医療研究センター 国際協力局連携協力部 保健師 菊地 紘子 先生

国立国際医療研究センター 国際協力局連携協力部 保健師 菊地 紘子 先生

菊地先生の活動した組織の紹介

  • 国立国際医療センター 小児科・婦人科・未熟児室病棟
  • 日本赤十字社医療センター 未熟児室
  • 青年海外協力隊 ベナン
  • 国境なき医師団 中央アフリカ・ハイチ
  • 国立国医療研究センター 国際医療協力局
  • 宮崎市子ども未来局親子保健課出向
  • 緊急援助隊感染対策チームコンゴ民主共和国
  • セネガル母子保健サービス改善プロジェクト

先生が診たエボラウイルス病(エボラ出血熱)について

エボラウイルスによる感染症であり、主として患者の体液など(血液、分泌物、吐物、排泄物)に触れることに感染する。潜伏期間は2~21日であり、症状は発熱、倦怠感、食欲低下、頭痛、嘔吐、下痢、腹痛、などの消化器症状。重症例では神経症状、出血症状などがみられる。治療は対症療法であり、予防としては野生動物や患者の体液に直接触れないといったことが挙げられる。

コンゴ民主共和国での活動について

独立行政法人国際協力機構(JICA)によって設立された国際緊急援助隊(JDR)感染症対策チームは、海外で発生した感染症の流行に対して迅速かつ効果的な支援を行うために組織されたチームである。感染症に関する幅広いニーズに対応するため、様々な専門分野の知識、経験を有する隊員から構成されている。

2018年にコンゴ民主共和国内(赤道州)でエボラ出血熱が発生し、エボラ流行が宣言された。翌2019年には東部地域でのエボラ出血熱の流行が発生し、WHOが緊急事態宣言を発令した。これを受けて国際緊急援助隊・感染症対策チームが派遣された。

調査隊(一次隊)が派遣されたのち、アウトブレイクを回避するため本隊(二次隊)が派遣された。感染制御班(IPC)はチョポ州の安全な診療とエボラ出血熱サーベライズ体制の強化のため研修・評価・環境整備を行った。具体的な活動として、個人防護具(PPE)着用実習、体温測定、リスクコミュニケーション・コミュニティーエンゲージメント(PCCE)、プレ-ポストテスト、評価シートの実施、物品供与が行われた。

感染症危機管理専門家養成プログラム(IDES)と実施疫学専門家養成コース(FETP)について

厚生労働省の感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラムは新興・再興感染症への対策の一環として、感染症危機管理に対応できる人材の育成を行うことで、人的な国際貢献が可能となる体制を築くとともに、国内での感染症危機管理対応力の強化を図る目的で設定された。

国立感染症研究所の実施疫学専門家養成コース(FETP)は、感染症危機管理事例を迅速に探知して適切な対応を実施するためのコアとなる実施疫学者を養成し、全国規模ネットワークを確立することを目的に設置された。

その他の活動

青年海外協力隊では保健師として、ベナン共和国での地域の母子保健の向上を目的に妊婦健診、お産の質の向上、5S推進、啓発活動などを行った。国境なき医師団では看護師として、中央アフリカ共和国での看護ケア、看護人材マネジメント、薬剤部門マネジメント、予防接種キャンペーンを行った。

感想

菊地先生はアフリカのセネガルという国で活動されており、普段は国境を越えた医療の提供や衛生管理における支援などを通して、衛生管理が行き届いていない地域の人々の健康を守る取り組みを行っておられます。日本では衛生管理が確立してしないと感染症にり患しやすいことが知られていますが、アフリカでは衛生を改善することの意義に対する理解がなかなか得られないことがあるそうです。その中でも菊地先生は献身的な姿勢を保ち続け、現地の参加者に衛生管理の大切さを肌で感じさせた経験があり、異なる価値観や文化の中でも現地の人々に理解してもらいたいという前向きな姿勢に感銘を受けました。

現在はcovid-19の感染が拡大しているため素人の私でも海外の感染症の現状について講義を理解することができましたが、人々があまり目を向けていない段階から海外の感染予防を支援する団体がいるということは非常にありがたいと感じました。アフリカからの貴重なご講演、ありがとうございました。

執筆者

小澤 ちはる(小学校教員)

仙台医療センター付属看護学校
2年 遠藤帆華
1年 田中佑奈
菊地先生の後輩です

講義録音

はじめまして、こんにちは。
国立国際医療研究センター国際医療協力局連携協力部連携推進課保健師の菊地紘子と申します。
今日は、20年来の恩師である西村秀一先生のWeb講演を拝見したところから繋がり、みちのくウイルス塾にお招きいただきました。大変光栄なことに看護師・保健師による講演第一号とのこと!ありがとうございます。つたないお話ですがおつきあいただけると幸いです。

はじまり

私は、大河原町の生まれです。小さい頃からテレビなどで見るアフリカの様子、貧困や食糧危機、紛争などのニュースを見て、なぜアフリカが貧しいのか疑問でした。なんとか私にもできることはないか、そう考えたときに、医療の面から、医師をサポートする看護師となって、アフリカの人々のために働きたいと思うようになり、看護師を目指すようになりました。看護師として世界の困っている人のもとへ駆けつけたいと思っていました。ナイチンゲールの伝記を読んで、彼女の生き方に大変感銘を受けたのも大きく影響しています。早く看護師になりたくて、看護学校に入学しました。看護学校で毎日看護の勉強ができるのが嬉しかったです。

戴帽式でナースキャップを授かり、ナイチンゲール誓詞を読み上げた感動は、今でも忘れられません。西村先生は、微生物学の授業を看護学校に教えにきてくれました。当時、アメリカCDC帰りの西村先生は、国際協力に憧れる田舎の看護学生の私にとって衝撃でした。あまりに前のめりな私を、西村先生はスカウトしてくださり、ウイルスセンターでアルバイトさせていただきました。インフルエンザやアデノウイルスの検体を取り扱ったり、培地を作成したりウイルスを扱える看護学生として大変貴重な経験をさせていただきました。

それから、看護学校の卒業生で青年海外協力隊を経験された先輩のお話を聞いて、国際協力を目指すなら大学編入を進められました。より幅広く公衆衛生を学びたいと思い、宮城大学に編入しました。大学編入し、勉強を進めるうちに、サハラ砂漠以南のアフリカ*サブサハラアフリカに、特に母子保健の指標が低い国が多くあることがわかりました。ニジェール・マリ・中央アフリカなどサブサハラアフリカ、フランス語圏アフリカの母子保健のために働きたいという強い思いから、フランス語を独学で勉強し始めました。

大学を卒業し、国際協力に力を入れている国立国際医療センターに就職しました。希望が叶って小児科病棟に配属となり、小児科・婦人科・未熟児室で勤務しました。4年目に、夢だった青年海外協力隊を受験しますが、不合格・・・国際協力の夢を諦められず、もっとフランス語を磨こうと思い立って渡仏し、ソルボンヌでフランス語を学び1年半で戻ってきました。日本赤十字社医療センターの未熟児室でNICU看護に勤しむ中、念願叶って青年海外協力隊に合格しました。

憧れていた、サブサハラアフリカのベナンで2年間、住民に近いレベルで母子保健活動に取り組んできました。ベナンも貧しく母子保健指標の低い国でしたが、さらに医療を必要とする国や地域に行きたい熱意に燃えて、国境なき医師団に登録しました。中央アフリカとハイチで人道支援活動に取り組みました。国境なき医師団の看護師として、やりがいと生きがいを感じていましたが、国境なき医師団がずっとその国にいられるわけじゃない、国が変わらないとよくならならい、と思いました。医療の面から国を支える国際協力に取り組みたい想いから、国際医療協力局に就職し、今に至ります。

国際医療協力局では、宮崎市に出向し母子保健行政に携わり、また緊急援助隊感染症対策チームとしてコンゴ民主共和国へ派遣、現在は、保健医療行政・看護助産教育の専門家として、セネガルの母子保健サービス改善プロジェクトに派遣されています。

国際医療協力局について

国際医療協力局は、あらゆる国の人々が格差なく健康に暮らせる社会を目指し、医療・保健衛生の向上を推進しています。世界には、貧困から人々が十分な医療を受けられない国や、安全な妊娠・出産ができない国、予防・治療が可能なはずの感染症で長生きできない国が数多くあります。国際医療協力局は、こうした国の人々の健康を守るために、主に母子保健、疾病対策、保健医療人材、医療の質、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの分野で、さまざまな支援を行っています。1986年の創立以来、保健医療分野における日本を代表する国際協力機関として、厚生労働省や外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)、世界保健機関(WHO)などと連携しながら、開発途上国での技術協力プロジェクトへの専門家派遣、国内外の保健医療人材の育成、国際保健医療の研究を通じて国際協力を行っています。また、世界各地で勃発する自然災害や感染症大流行などによる、多くの人の健康を脅かす危機にも、医療チームを派遣し救援にあたる活動を続けています。

現在62名が所属しており、世界各地に局員が派遣されています。国際医療協力局長、国際保健医療専門家48名(医師28名、歯科医師2名、看護師8名、保健師3名、助産師2名、薬剤師1名、診療放射線技師1名、研究職3名)、事務職等14名

コンゴ民主共和国での国際緊急援助隊・感染症対策チーム

みちのく「ウイルス」塾なので、ウイルスに関連して、コンゴ民主共和国での国際緊急援助隊・感染症対策チームの活動をメインにお話しいたします。国際緊急援助隊・感染症対策チームについて、概要をご説明します。

感染症対策チーム設立の背景

エボラ出血熱への支援における課題

  • JDR医療チームは派遣できず、従来の体制では対応できない感染症への対応が求められる
  • 個別の専門家を派遣したため、チームとして活動ができなかった
  • WHOへ派遣したため、従来のチーム派遣 のようなロジ的支援ができず、専門家の負担かが大きくなった
コンゴ民主共和国の概要について

今回のJDR感染症対策チーム招集の背景と目的活動は2週間。研修と介入を実施すべく、このような計画がたてられました。エボラウイルス病(エボラ出血熱)はご存知の方も多いと思いますので、おさらいします。

州医務局で、活動について協議・合意を得ました。活動1)研修について 研修は3日間の予定で、内容はIPCの基礎から、実践、評価まで含めました。スタンダード・プレコーションはIPCの基本で、特に強調しました。特に手指消毒、手洗いに関しては実習を行い、丹念に確認しました。これは、手洗いの方法で、プレゼンテーションや資料でお渡ししていますが、実習会場は屋外なので、壁に大きく手書きで書いたポスターを貼りました。見落としやすい部分については、JDRから一人一人の参加者に実演を含めて説明します。特に爪の間が見落としやすかったです。非接触型の体温計、今では COVID-19パンデミックもあって普及しましたが、接触感染のエボラ出血熱のアウトブレイクの際にも活躍していました。こめかみの辺りに赤外線を当てて測ります。個人防護具(PPE)の着脱訓練も行いました。WHOスタッフの協力も得て、行いました。というのも、WHO、MSF、NCGM、で多少異なるプロトコールです。現場が混乱しないように、チョポ州で主に採用されているプロトコール、WHO方式で行いました。実際に、レッドゾーンとグリーンゾーンを分けて、どのタイミングで手指消毒をするか、個人防護具を身に付けるか、をデモンストレーションしました。デモンストレーション後、参加者全員に着用の実習をしてもらいました。数名だけでいいのでは、と州医務局職員・参加者に言われましたが、いつ来るかわからない緊急事態に備えるために、今やってみなくてどうする!とフランス語で熱弁し説得したところ、よし!じゃあやろう!とやる気になってくれました。州医務局の職員の鶴の一声で、全員がモチベーションを持って取り組みました。とはいえ実際にやってみると、難しいのです。慣れない防護具を着て、長靴を履くのも難しい。だんだん重装備になってくると、呼吸もしづらく視界も曇ってきます。最後に背中に名前を書いて、完成です。個人防護具を完全に着ると、誰が誰かわからなくなります。そのため、名前を書くことはとても大事です。最終的には皆様とても達成感あふれる実習でした。

講義の中で強調した部分では、Risk Communication and Community Engagement (RCCE)です。2014年、西アフリカでの悲劇は悪いうわさや差別などから起こりました。

コンゴ民でも、治療センターが焼き討ちにあったこともあります。コミュニティの信頼関係を得ることは、非常に重要です。そして、それを伝えるのが我々外国人ではなく、コンゴ民の講師によって伝えられることが重要です。

さて、病院や保健センターで、感染管理がどのようになされているか?評価シートを使ってリスク評価するのですが、病院に向かい、実際に病棟を巡って、実習も行いました。 研修の開始前と、最後に、プレポストテストで理解度を確認しました。

活動2)安全な診療体制支援について
8/27(水)にチョポ州キサンガニ市内のマキソ総合病院(三次医療施設)及びサントカミーユ保健センター(一次医療施設)を訪問し、WHOの迅速評価アセスメントシートに基づき施設評価を行いました。評価の結果、感染管理の観点から、様々な問題点が浮かび上がりました。中でも水不足は深刻な問題であり、水不足の際の対処方法が不十分でした。そこで州保健局担当官と相談し、まず2施設のキーパーソンをIPC研修に参加していただき、院内感染対策を基礎から習得いただいきました。その上で、アセスメントシートに基づき、手指消毒に必要な物品、塩素、などの物品供与を9/5(水)に行い、不足するインフラを補い安全な診療ができるよう支援を行いました。

アフリカは、握手をする文化です。西洋人がほっぺにキスをするように、おでこをごち、ごち、と合わせる挨拶もあります。しかし、エボラや、今の COVID-19パンデミックにおいてはそれらの挨拶は不可能です。この腕をかわす挨拶は、エボラ出血熱対策の時も行われていました。

①仏語圏人材としてフランス語圏アフリカのコンテキストを理解し、彼らに寄り添い、フランス語を話すことは、現地カウンターパートや研修参加者にとって短期間でお互いを理解し円滑な研修を運営するために、とても大きなアドバンテージであったと感じる。チーム員にとっても等しくアドバンテージであり、通訳者が24時間同行していないため、必要時は適宜対応を行った。多機関から構成されるチームに対し、NCGM国際医療協力局がフランス語圏人材も駆使しあらゆる対応ができるとプレゼンスを示すことができたと感じる。

②看護師として、JDR感染症対策チームの専門家として、初の看護師参加だった。専門家チームには医師が多いため、業務調整員と並んで医師のサポートに徹することができた。また、現地の保健センター長や研修参加者には看護師が多く、看護師として同職種の目線から、サポートすることができた。

今回、感染制御班で一緒に働いた医師は、IDES出身の方でした。IDESは医師に限りますが、FETPは医師のほか、薬剤師、保健師、看護師、検査技師など医療従事者や、自治体で公衆衛生業務に従事している職員が参加できるプログラムです。

そのほかの活動も少しご紹介します。

青年海外協力隊のベナンから 感染症に関するハイライト

予防接種:BCG、ポリオ、5種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳・B型肝炎・Hibワクチン)、肺炎球菌ワクチン PCV13、麻疹、黄熱病の定期接種 1回目:BCG+ポリオ 2/3/4回目:5種+PCV13+ポリオ 5回目:麻疹+黄熱病 産科:破傷風ワクチンの励行、母親学級、カンガルーマザーケアの励行 地域:衛生教育(写真はコレラ流行時の衛生教育、孤児院にて)

国境なき医師団の中央アフリカから感染症に関するハイライト

予防接種で予防できる病気で亡くなる子どもたちを目の当たりにし、辛いことも多かったです。狂犬病、麻疹、助けられなかった子ども達がたくさんいます。
麻疹やポリオに関しては、予防接種キャンペーンを行っていました。

病院に来てくれる子供たちだけではなく、地域に出向いて、地域の子供たちに大規模に予防接種するものです。ラウンドクルーザーに荷物を乗せて、8人ぎゅうぎゅうに乗って、雨季はこのような悪路をはるばる数時間かけて地域に向かいます。何にもない広場に、テープを張って導線を作ります。登録、麻疹ワクチン、ポリオワクチン、の順に回ります。一度に1000人から2000人の子どもたちに予防接種するため、スタッフは効率よく業務に徹して、途中交代して疲れないように安全に進めます。

最後にセネガルのCOVID-19の現状をご紹介します。

7月16日までの状況にアップデートして報告セネガルでは2020年5~6月頃に第一波があり、2021年2月に第二波がピークを迎えました。その後は減少していたのですが、ここ最近、7月に入り症例数が増加傾向にあります。第三波の到来かもしれません。政治的判断とともに流行状況を見ていくと、2020年の3月にセネガル で初めてCOVID-19輸入例が入って以来、非常事態宣言を発令し、学校の休校措置、レストランの営業縮小、夜間外出禁止令などが始まりました。そして1週間もたたないうちに、空港閉鎖、国際線の就航が中止となります。5月~6月に緩やかにピークを迎え、徐々に減少したため、7月から国際線が再開となりました。その後も症例数は緩やかに低下していましたが、11月末頃から右肩上がりになり、12月にはどんどん増加、年明けの1月についに非常事態宣言が発令されました。今回は首都ダカールと近郊州のみです。その後、ワクチンも始まり、2月をピークに減少していきましたので、3月に宣言は解除されました。

本日は、ご清聴いただき、誠にありがとうございました。

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