ウイルスセンター

「アフリカでのウイルスハンティング-出血熱ウイルスから未知のウイルスまで」を聴講して

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター国際疫学部門 助教 梶原 将大 先生

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター国際疫学部門 助教 梶原 将大 先生

はじめに

梶原先生は2013年からザンビアの研究拠点で活動しており、現在は、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターで研究をなさっています。さらにザンビア拠点のほかにもコンゴ民主共和国などにも行かれているそうです。

概要

ザンビアの研究拠点の歴史

1983年にザンビア大学獣医学部が日本の無償資金協力により設立され、2007年には人獣共通感染症リサーチセンター・ザンビア拠点が設置された。また、このザンビア拠点にはBSL3のラボがあるが、そのほかに移動式のラボもあり、ときにそこで研究することもあるそうだ。

ザンビアでのフィールドワーク

フィールドワークは、げっ歯類や家畜などから節足動物まで幅広い動物を対象に行われている。ザンビアは8つの国に囲まれており、そのため国内のみならず周囲から入ってくる感染症のリスクにさらされている。だが、これまで長い間、ウイルス性人獣共通感染症の詳細な調査はされていなかった。そのため、疫学情報や研究・検査技術が不十分な状態である。それらの充実のみならず人材育成もかねてザンビアでの活動が展開されている。長年北海道大学と交流が続いており、またザンビアは政治的、経済的にも安定しているため南部アフリカ地域における研究の中核としての役割も期待できる。

エボラ・マールブルグウイルス感染症

これらウイルス感染症は、スーダンで180人、西アフリカで11、327人のほかコンゴ共和国、ガボンで361人、アンゴラで227人、コンゴ民主共和国で871人、ケニアで2人、ウガンダで298人もの死亡が確認されている。このことから分かるようにザンビアはこのウイルス感染症発生国に周囲を囲まれている。

クリミア・コンゴ出血熱ウイルス

クリミア・コンゴ出血熱ウイルスはブニヤウイルス目、ナイロウイルス科オルソナイロウイルス属に属するウイルスで3つの遺伝子セグメントで構成される、マイナス一本鎖RNAウイルスである。このウイルスによる感染者の示す症状には発熱、頭痛、関節痛、出血症状などがあり、致死率は高い(およそ30%)。ブニヤウイルス目には12科4亜科48属383種がありとても大きなウイルスグループを形成している。少し前までは分類上ブニヤウイルス科とされていたが、それらの大グループをまとめた結果ブニヤウイルス目となった。先生はこの講演で、このブニヤウイルス目に属する12のウイルスを詳しく紹介された。クリミア・コンゴ出血熱ウイルスはこのウイルスを持つイボマダニなどのマダニから家畜や野生動物を介してヒトに感染するか、あるいはマダニから噛まれることで直接人に感染する。そこで先生たちは、ザンビアにて牛、ヒトおよびマダニを対象とした疫学調査を行った.

蛍光抗体法を用いてクリミア・コンゴ出血熱ウイルスの特異抗体のスクリーニングを行った結果、調べた1、047頭の牛の8.4%が陽性だった。次に、ザンビアのマダニがどれくらいの頻度でこのウイルスを保有するのかを知るため、ザンビア全土でマダニを採取し、このウイルスのS遺伝子を対象にウイルスの遺伝子検出を試みた。採取した3000個体のうちこのスクリーニングを行ったのは290個体だったがそれらのうち陽性を示したのは11匹、3.8%だった(分子系統樹は省略)。以上の結果から、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスがザンビアのマダニおよび家畜(ウシ等)の間で維持されていることがわかった。

次にヒトでの抗体保有を調べる血清疫学調査を行った。その結果調べた747人のうちの抗体陽性者は、12人(1.6%)であった、すなわち、これは過去に感染した事があることを意味するが、頻度は家畜ほどではない。とにかくザンビア国内でクリミア・コンゴ出血熱ウイルスの感染が起きているかもしれないことが、明らかになった。

まとめ

  • クリミア・コンゴ出血熱ウイルスはザンビア国内に広く分布する。
  • クリミア・コンゴ出血熱ウイルスはダニ-動物(家畜を含む)の感染環において維持されているようだ。
  • ザンビアでもヒトでクリミア-コンゴ出血熱が散発的に発生しているかもしれない。

コウモリの保有するウイルスについて

コウモリが関与する人獣共通感染症を引き起こすウイルスとしてMERS-CoV、SARS-CoV1、SARS-CoV2、Orthoreo virus、Issyk-Kull virus、Lyssa virus、Ebola virus、Sosuga virus、Nipah virus、Hendra virus、Marburg virus、Kasokero virus、Menangle virus等があげられる。

1.フィロウイルス科

フィロウイルス科は6属からなる (Marburgvirus属、Ebolavirus属、Dianlovirus属、Cuevavirus属、Striavirus属、Thamnovirus属)。エボラウイルスには6種のウイルスがある。 その中でBombali virusは2018年にシオラレオネで発見され、ネイチャーマイクロバイオロジー誌により初めて世に紹介されたウイルスだ。

フィロウイルスの自然宿主について

フィロウイルスの自然宿主は実はよく分かっていない。しかしザイールエボラウイルスの遺伝子がコウモリから検出されていることから、コウモリが自然宿主の有力候補となっている。また、ボンバリエボラウイルスが報告されたのはケニアとシオラレオネからであるが、このウイルスはChaerephon pumilusとMops condylurusという2種のコウモリから検出されている。ただし、そのボンバリウイルスも(そしてクエヴァウイルスも)、ウイルス遺伝子は検出されているものの、感染性を持ったウイルスとしては分離されていない。

マールブルグウイルスの分離について

マールブルグウイルスはウガンダやコンゴ民主共和国などでよく分離され、エジプトルーセットオオコウモリがマールブルグウイルスの自然宿主だと考えられている.このウイルスは遺伝的に多様なウイルスだがそれらが、このコウモリにより数年間にわたり保持されている可能性があるという。エジプトルーセットオオコウモリはマールブルグウイルスに感染しても非症候性感染(不顕性感染)を起こしていることが知られており、そのためこのコウモリが自然宿主である可能性が高いとされている。

フィロウイルス検出の試みをンドラ、モンゼ、スースーマン村、カサンカ国立公園などで行った。エジプトルーセットオオコウモリの捕獲にはハープトラップを用いた。

捕獲したエジプトルーセットオオコウモリの血中抗体を調べた結果、マールブルグウイルスに対する抗体の検出率は43.8%であった一方、エボラウイルスに対する抗体はほとんど検出されなかった(n=290)。また採取月ごとのマールブルグウイルス抗体陽性率を解析してみた結果、生まれて間もないコウモリで高いことが分かり、このことから、抗体を母体からもらっている可能性が示唆された。

小括

  • ザンビアで捕獲したエジプトルーセットオオコウモリにおいてフィロウイルス特異IgG抗体を保有する個体を確認。
  • 43.8%のコウモリがマールブルグウイルス特異抗体を保有。

コウモリにおけるマールブルグウイルス抗体保有率の季節的変動について

コウモリにおけるマールブルグウイルス抗体保有率の季節的変動では、11-12月に繰り返し抗体陽性率のピークが認められため、マールブルグウイルスがザンビアのエジプトルーセットオオコウモリ群内で維持されているか、ウイルスが毎年外から持ちこまれている可能性が高い。しかし、獲得されたマールブルグウイルス特異抗体は、コウモリの体内で3か月で検出限界値以下になるため、8-10月に活発なウイルス伝播が起こっているとの仮説が立てられた。そこで2、9、11月にウイルス遺伝子調査を実施したところ、確かに2月と11月は陰性で、9月に採取したコウモリからマールブルグウイルス遺伝子が検出され、この仮説を支持する結果となった。

また、ザンビアで発見されたマールブルグウイルスは、ウガンダコンゴ民主共和国のウイルスと非常に近縁であり、コンゴ民主共和国で人に感染したものと遺伝子が99.1%一致していた。

カソケロウイルス、SFTS様新規ウイルスについて

カソケロウイルスはナイロウイルス科、SFTS様新規ウイルスはフェニュイウイルス科に属する。これらのウイルスは二つともエジプトルーセットオオコウモリが自然宿主であると思われる。カソケロウイルスは、実験動物のさまざまな臓器で増殖可能で、マウスに実験的に投与したところ、極めて毒性が強くマウスは3-4日で死に至った。

今後の計画

  • マールブルグウイルスだけではなく、カソケロウイルス、回帰熱ボレリアなど人に病気を起こす病原体が、同じ洞窟で発見されている。
  • 周辺住民を対象とした血清疫学調査を計画中である。
    現在、先生たちが特に力を入れていることはザンビアでのザンビア人の人材育成、そしてザンビアでのCOVID-19研究だという。

謝辞

梶原先生、この度はとても貴重な講演をしていただき誠にありがとうございました。また、先生の講演で僕はウイルスと動物とヒトの関係性について深く考えることができました。さらに、カソケロウイルスというウイルスが地球上に存在することを梶原先生の講演で初めて知り、とても興味深いウイルスであることが分かり面白かったです。さらに実際にフィールドに出てウイルスを分離することは自然宿主を特定するうえで非常に重要になってくることが分かり、僕も将来フィールドで研究がしたいです。そのためにも、将来的にウイルス分離の手技などをしっかりと学んでいきたいと思います。

大変楽しく分かりやすい講演をしていただき誠にありがとうございました。

執筆者

AICJ中学校1年生(東京大学異才発掘プロジェクト)内藤煌瑛

AICJ中学校1年生(東京大学異才発掘プロジェクト)内藤煌瑛

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