ウイルスセンター

「エボラが大流行!そのとき何ができるのか、何をすべきなのか?」を聴講して

京都大学 ウイルス・再生医科学研究所特定助教 古瀬 祐気 先生

京都大学 ウイルス・再生医科学研究所特定助教 古瀬 祐気 先生

はじめに

古瀬先生は参加型の授業方式で”pollev.com”というものを使用しての授業でした。
先生は香港育ちで、高校から音楽が好きになっていきバンド活動をしていました。医学生になって、途上国の医学に興味を抱き、周り(環境)を変えてみようと考えた末、フィリピンへ渡りました。フィリピンでは子供のうちに病気にかかって亡くなってしまうことも珍しくないそうです。卒業後、先生は治療法が決まっているものは自分ではなくても行うことができると考え、自分にしかできないことをやろうとアメリカに渡り微生物の研究を開始しました。さらに2014年にはWHOの依頼に応えエボラ出血熱(エボラウイルス病:EVD)流行地の現地に赴き、その実地対策に熱心に取り組みました。そうした豊かな経歴をもとに話してくださり、私たちは次のようなことを学ぶことができました。

概要

EBOLAウイルス病

先生は、まず初めに代表的な病気 (エボラ、HIV、麻疹、インフルエンザ)を挙げて、質問しました。「それらを致死率の高い順に並べるとどうなる?」 HIV、エボラ、麻疹、インフルエンザです。続いて、「感染力の高い順に並べるとどうなる?」 麻疹、HIV、インフルエンザ、エボラです. エボラウイルス病は致死率が高く非常に怖い感染症だと考えられがちですが、こうしてみると 感染力はそこまで高くない。

このエボラウイルスは1976年に初めて起きたこの病気の流行の中で確認され、それ以降10年弱のタイムスパンで流行を繰り返している。2014年のアウトブレイクでは、約1万人が亡くなっている。エボラウイルスは主に接触感染などで感染するため、ヒト-ヒト感染による流行はめったに大きくならないはずだった。だが、2014年のアウトブレイクでは、原因がわからない初めの患者の感染以外すべてヒト-ヒト感染だった。

この病気が大流行した理由

アフリカでは、ヒトが亡くなったら、その遺体にハグをするという風習を持つ地域がある。流行の拡大にはそのような文化も関係したと考えられている。また、村長や位の偉い人が亡くなった際に、パワーを受け継ぐという意味で遺体を洗った水を浴びるという風習まである地域もある。

2014年のアウトブレイクのとき、WHOはCDCや国境なき医師団などのパートナーの働く環境を良いものにすることを目指して活動した。また、病院の数が足りないときには、パートナーが簡易病院を増設することもあり、そのような活動のコーディネートも行った。

流行の制圧には情報が不可欠である。しかし、アフリカはニュースなどを知らせる情報インフラに乏しく、そこで情報発信手段の一つとしてパレードを行い、それを見てもらったりそれに参加してもらったりして現地の人々にエボラ病についての理解を深めてもらったそうだ.

また、情報を発信する際にはまずは現地の医師からの方が理解をうけやすかった。アフリカは過去に植民地化された歴史をもつ国も多く、肌の色が違う人が説得しようとすると逆に信用されない事があるためである。現地の医師に内容を伝えてそこから現地の人々に広めるということをしなければならない。またあくまでも現地で流行しているわけなので、制圧には現地の人々の意見を大切にしていくことが大事になる。

治験の重要性について

エボラが流行した際にアビガンが有効だという情報があったがそれが事実かどうかを確認するための「治験」が必要だった。そこで当時は治験を行うか行わないかで意見が分かれていたが、治験を行ったおかげで逆にアビガンがエボラウイルスに効果がないことが分かった。効果が「ある」ことだけでなく、「ない」ということが、はっきりすることも、その後の対策のためには非常に大事である。

今後の予算について

先進国が感染症にかける費用は100年前に比べずと多くなったが、発展途上国が感染症にかける費用はまだまだ少ない。

アフリカについて

先生の話を聞いて、アフリカはとても楽しく、人との出会いが素晴らしいということが伝わってきた。

エボラの制圧について

エボラは症状が出てから感染するため制圧可能だが、一方で今のCOVID-19のように不顕性感染を起こすものは制圧が難しくなる。逆の見方をすればエボラの方が、病気としての対策はずっと簡単だということだ。それがすぐにうまくいかない医学以外の問題、それこそが実はこの病気の制圧には重要な要素なのである。

謝辞

古瀬先生、この度はとても貴重な講演をしていただき誠にありがとうございました。また、今回の講演で僕はウイルスの疫学や実際に人に対する感染などの情景を考えることができ、ウイルスに対する正しい知識を身に着けることができました。さらに先生の講演を聞いてin silicoの凄さが実感でき、理論でも十分ウイルスを研究することができることが分かりとても感動いたしました。そこでこれからは僕も疫学やヒトとウイルスの関係性についてin silico解析なども用いながら考えていこうと思います。

大変楽しくわかりやすい講演をしていただき誠にありがとうございました。

執筆者

AICJ中学校1年生(東京大学異才発掘プロジェクト)内藤煌瑛

AICJ中学校1年生(東京大学異才発掘プロジェクト)内藤煌瑛

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