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「巨大ウイルスとは何者か」を聴講して

東京理科大学理学部第一部教養学科教授 武村 政春 先生東京理科大学理学部第一部教養学科教授 武村 政春 先生

巨大ウイルスとは

巨大ウイルスは、粒子径が200nm以上、ゲノムサイズが300kb以上である大型のDNAウイルスであり、ヒトや家畜に対する病原性はない原生生物ウイルスに属する。2003年にミミウイルスが発見されたのが最初である。その後、2009年にマルセイユウイルス、2011年にメガウイルス、2013年に現在最も大きいとされているパンドラウイルス、2014年にピソウイルス、2018年にテュパン(ツパン)ウイルスなどが発見されている。 今までに知られている巨大ウイルスは主にアカントアメーバに感染する。NCLDV(核細胞質性大型DNAウイルス)に分類され、ポックスウイルス、イリドウイルスなどと同類と考えられている。

ミミウイルス

ミミウイルスには、DNAウイルスでありながら、mRNA、transfer RNAも存在する。巨大ウイルスは単系統性であり、そのため起源は古い。健康成人の血中や便からも検出されることがあり、自然宿主がアカントアメーバではなくほかにあるのではないかとも考えられているが、まだ研究段階である。粒子にはスターゲート構造があり、アカントアメーバに感染すると、それを開放してゲノムを吐き出す。その後、細胞質でウイルス工場をつくり、そこから1ゲノムずつストローのような構造(スターゲート構造の反対側にある)で回収する。ミミウイルスにはaaRS(アミノアシルtRNA合成酵素)遺伝子が存在する。通常のウイルスは宿主のaaRSを利用するが、ミミウイルスはそのうちいくつかを自身で持っている(Met, Arg, Tyr, Cysの4つ)。とくにアカントアメーバが飢餓状態になったときにミミウイルスが自身のaaRSを発現し、飢餓状態を回避することができるではないかと考えている。

日本産巨大ウイルス

国産の巨大ウイルスには、ミミウイルスの亜種や、Tokyovirus、Medusavirus(現在論文投稿中、日本の温泉で発見)などがある。Medusavirusがアカントアメーバに感染すると、アメーバがCyst化し硬くなる。ギリシャ神話のMedusaが見た人を石にすることになぞらえて命名された。カプシドは細胞質で増殖するが、DNAは細胞核に局在する。ミミウイルスのようなウイルス工場を持たないのが特徴的である。細胞質から放出されるのはおよそ24時間後であり、真核生物と同じコアヒストンを含めた5つのヒストン様遺伝子を持つのはこのウイルスが初めてである。

●参考文献 武村政春著 『巨大ウイルスと第4のドメイン』講談社ブルーバックス

質疑応答

Q1

ミミウイルスとアカントアメーバの遺伝子の相同性はあるのか。

A

相同性はない。本当に宿主からもらったのか、まだわかっていない。

Q2

メドゥ―サウイルスがCystになったあとどうなるか。

A

元には戻らず、そのまま。

Q3

クリスパーとミミウイルスの関係は?

A

関係なし。ただしクリスパーと似たミミヴァイアというしくみがある。

Q4

巨大ウイルスの起源は?

A

もともと何らかの生物で、進化したものと考えられるが、よくわかっていない。

Q5

ヒストンとしての機能は

A

まだ証明されていない。

Q6

ミトコンドリアの中には、どのように存在するのか。

A

1個だけ入る。ミトコンドリアの構造を壊したりはしない。入り方はわかっていない。

感想

「巨大ウイルス」という存在をまず知りませんでした。ヒトや家禽に感染しない環境ウイルスであるため、インフルエンザなどと違ってなじみのないウイルスでしたが、なぜそのような大きな形になったのか、どのような起源があるのか、本当にヒトに感染する巨大ウイルスは今後も出てこないのかなど、非常に不思議で、かつ興味深い領域であると感じました。演者の先生は、「その辺の汚い水を拾ってくれば、また新たな巨大ウイルスが見つかるはず」という考えで全国を飛び回り、新種を発見するワクワク感をお話しされていました。また、わかっていないことが多すぎて、自分が引退するまでに全容が解明されることはありえないということで、常に高いモチベ―ションで研究をすることができると述べられていました。今回の講演は、代表世話人の西村先生が読んだ一冊の本から実現したものであり、演者の先生が執筆された参考図書を私も読みたいと思います。

今回初めてウイルス塾に参加させていただき、非常に貴重なお話をたくさん聞くことができました。聴講録を書かせていただくことで、より多く吸収しようという気持ちになり、積極的に参加できたのではないかと思います。ありがとうございました。

執筆者

東北大学大学院医学系研究科博士課程1年 矢島剛洋東北大学大学院医学系研究科博士課程1年 矢島剛洋

 

巨大ウイルスの足跡 武村先生の講義を聴講して

私がウイルスに興味を持つきっかけとなった『新しいウイルス入門』の著者である武村先生の講義を受けられると聞いて、先生の講義を心待ちにしていた。先生の専門とする領域は巨大ウイルスという、微生物学でも新たな分野でありまだまだ知られていないことが多い。ウイルスと言っても感染となりうる生物種によって種類は様々であり、植物ウイルス、動物ウイルス、原生生物ウイルスなどでその中にも無数の種類が存在していてとにかく多様である。通常、ウイルスと言われてイメージする常識的なサイズは数十nmから300—400nmである。一方、巨大ウイルスの大きさはというと小型のもので200nm、大型のものになると1000nmを超える。これらはDNA量に関しても巨大であることから、巨大DNAウイルスとも呼ばれることもある。巨大ウイルスの一種で今回の講義で興味深かったウイルスはミミウイルスである。そもそもウイルスは生物としての定義づけがあいまいである。ミミウイルスについても同様であるが、そのDNAを解析してみると真核生物のそれよりも比較的最近誕生したものであり、他の2つのドメイン(アーキア・バクテリア)のそれとも異なっており、・細菌とは異なるクリスパーを持つ・(一部の種類ではあるが)aaRSの遺伝子を持つ、など遺伝子的に変わった特徴を持っているということだった。また、・表面に細長い繊維を持つ・カプシドの外側ではなく、内側に脂質二重膜構造を持つ、など形態的にも特異的な性質が見られた。これらのことを顧みればこのミミウイルスが生物の中で異色であることがよくわかる。特に、翻訳に関わる遺伝子について新たな発見があったのは巨大ウイルスを生物学的に解析するうえで貴重な材料だと強く思う。

今回の講義では他に、メガウイルス・ピソウイルス・メドゥーサウイルスなどミミウイルスとは異なる特徴を持つものや新種の巨大ウイルスについても述べられていた。今後、これらの研究が進められれば、巨大ウイルスが生物の進化のどの分岐で、どのような役割を担っていたのかを知ることができるだろう。いつかその日が来ることを期待し、研究者の方々のご活躍を心から願っている。

執筆者

東北医科薬科大学医学部2年 井出健介東北医科薬科大学医学部2年 井出健介

 

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